出欠
ペンネーム「エテモンキー」さんからの投稿です。
寄稿本当にありがとうございます!!
僕の名字は「ん」から始まる。
名前順はいつも最後だ。そのせいでつねに劣等感を抱えて生きてきた。出欠の時間は退屈である。
「佐々木」辺りまでは完全に上の空だ。最近は小説を読んでいることが多い。この間読んで面白かったのは秋川矢文の『裸の仮面』だ。主人公が弟の家を訪ねてチーズケーキを作る場面がすごく良かった。
「中村」になると少しずつ読書に集中できなくなってくる。先生がみんなの名前を呼ぶ声が本を読むときの心の声と混ざって、誰の台詞か分からなくなる。
「松田」が呼ばれた辺りで読書をやめる。今読んでるページの2つ前に栞を挟んで本を閉じる。そして思索に耽りはじめる。先生が名前を呼んで生徒が返事をする、そのリズムに身をまかせると、ガラガラの電車で寝てるときみたいな気持ちになって、頭がぐるぐる回りだす。昨日は自分の性格について考えて、少し寂しい気持ちになった。
「吉岡」が来ると考え事をするのをやめる。そして先生の声をなぞるようにして心の中で吉岡さんの名前を呼ぶと、吉岡さんはあの雨上がりの新宿のような声で返事をしてくれる。それから僕の名前が呼ばれるまでは余韻に浸る時間で、ついに僕の番がやってくる。
「ンベ島くん!」
「はい、ンベ島は今日も元気です!!」
編集者より
最初字面だけおっているだけで笑えてきました。
僕が高2の時の同じクラスの「ンジャリバ」さんもおんなじ気持ちだったのかな?彼女と久し振りに話してみたくなりました…